11.23.09:49
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04.01.19:30
嘘をつく
シャルノスMメアリ(゜_゜)
19××。某所にて。
「嘘をつくわ」
「なんだそれは」
ソファに腰掛けたジェイムズ・モリアーティは表情をくずすことなく視線をきっかり30°だけ上げ、瞬時に回答がなかったことで飽きたのか再び本に視線を戻した。
「嘘をつくの」
「なぜ」
「そういう、遊びがあるらしいわ」
メアリは口ごもる。出版社の担当さんに聞いたのだとか、恋人同士でこっそりやるのが流行なのだとか、そういうことは言わない。
「そうか」
勝手にしろと言いたげにジェイムズは溜息をついて項をめくる。
「あの……二人で、やる、…遊びだから…」
「嘘をつくのが遊びなのか」
「う…ええ…」
説明を受けたときはとても良い気がしたのだが、良さの説明がなかなか難しい。
「嘘をつくと宣言して嘘をつくのが面白いのか」
「ええ…そうよ…」
言葉に困る。
「決めた時間の間だけ嘘しか言ってはいけないの。本当の事を言ったら罰を受けるのよ。痛いのとかは嫌だし、音が出るだけのハンマーを貰ったから持ってきたの」
メアリがハンマーで手を叩くとピコッと音がなる。
「面倒だな」
「そう、かしら」
「…」
ジェイムズの反応が平常運行で蛋白なのでメアリの表情が暗くなっていく。
そうだ。彼はそういうひとなのだ。
「…今からか」
「え、ええ。二〇分くらい…やってみましょう」
思いの外乗り気なのだろうか。メアリはジェイムズの座るソファの対面に椅子を引き、ちょこんと腰掛ける。
「話し掛けても、いいかしら?」
「勝手にしろ」
セバスが淡々と紅茶を運んでくる。メアリは礼を言いながら土産に持ってきたスコーンをセバスに渡す。セバスは会釈して包みを持って下がる。
「今は、何を読んでいるの?」
「ドン・キホーテ」
ミゲル・デ・セルバンテス。しかし持っている本の厚みからきっとこれは嘘。
「面白い?」
「…いや」
おもしろい…のだろうか。少し面白い位なのかも知れない。
「仔猫」
「仔猫はやめて」
「いいのか?」
「!」
メアリはしばらく軽く目を見張って、震える手でハンマーを手に取り、自分の頭を叩いた。
「なるほど」
「ぐ」
「メアリ・クラリッサ。メアリ。スコーンはジャムと一緒に召し上がられますか」
「!」
トレーを持って戻って来たセバスの前で、メアリは固まる。
「…」
セバスはメアリとジェイムズを交互に見てから頷くと無言でスコーンを並べた。
「セバス。後で、後でね」
「はい。いいえ。はい」
表情を1インチもくずさずセバスは壁際に控えた。
「ジェイムズも、質問しないで」
「フン……」
ジェイムズはメアリの手元を一瞥してから呟いた。
「この玩具は誰から」
「ザックよ」
瞬間、室温が2度下がる。
「…」
ジェイムズは無言でハンマーを掴み自分の頭を叩く。
ピコッという音がとても合わずメアリは小さく噴き出した。
「どうして?」
「本当は…誰に、貰った。お前の分を引き受ける」
「いいの…?レストレイドおじさまから。ダーツの景品で貰ったそうよ」
「…そうか」
ジェイムズは誤魔化すように紅茶に口を付けた。
「おもしろくない?」
「…ああ、お前に説明されたよりは」
逆だとすると…面白いと思っていると言うことで良いのだろうか。
「いつも真実を言えと詰め寄ってくるお前が虚実を求めるとは、可愛くないな」
「ーーーーーーーっ」
しばらく固まって、メアリの顔がみるみる紅潮していく。
「あなたなんか嫌いよ!!」
鞄を掴んで出口に走っていく仔猫の背中を見ながら、少しだけ彼の口元が歪んでいるのをセバスが眺めていた。
「『可愛いな』『好き』って事ですか」
「…」
ピコッ
おわれ
終わりに
Q「そんな文化があったのですか」
A「安心しろねえよ」
以上
19××。某所にて。
「嘘をつくわ」
「なんだそれは」
ソファに腰掛けたジェイムズ・モリアーティは表情をくずすことなく視線をきっかり30°だけ上げ、瞬時に回答がなかったことで飽きたのか再び本に視線を戻した。
「嘘をつくの」
「なぜ」
「そういう、遊びがあるらしいわ」
メアリは口ごもる。出版社の担当さんに聞いたのだとか、恋人同士でこっそりやるのが流行なのだとか、そういうことは言わない。
「そうか」
勝手にしろと言いたげにジェイムズは溜息をついて項をめくる。
「あの……二人で、やる、…遊びだから…」
「嘘をつくのが遊びなのか」
「う…ええ…」
説明を受けたときはとても良い気がしたのだが、良さの説明がなかなか難しい。
「嘘をつくと宣言して嘘をつくのが面白いのか」
「ええ…そうよ…」
言葉に困る。
「決めた時間の間だけ嘘しか言ってはいけないの。本当の事を言ったら罰を受けるのよ。痛いのとかは嫌だし、音が出るだけのハンマーを貰ったから持ってきたの」
メアリがハンマーで手を叩くとピコッと音がなる。
「面倒だな」
「そう、かしら」
「…」
ジェイムズの反応が平常運行で蛋白なのでメアリの表情が暗くなっていく。
そうだ。彼はそういうひとなのだ。
「…今からか」
「え、ええ。二〇分くらい…やってみましょう」
思いの外乗り気なのだろうか。メアリはジェイムズの座るソファの対面に椅子を引き、ちょこんと腰掛ける。
「話し掛けても、いいかしら?」
「勝手にしろ」
セバスが淡々と紅茶を運んでくる。メアリは礼を言いながら土産に持ってきたスコーンをセバスに渡す。セバスは会釈して包みを持って下がる。
「今は、何を読んでいるの?」
「ドン・キホーテ」
ミゲル・デ・セルバンテス。しかし持っている本の厚みからきっとこれは嘘。
「面白い?」
「…いや」
おもしろい…のだろうか。少し面白い位なのかも知れない。
「仔猫」
「仔猫はやめて」
「いいのか?」
「!」
メアリはしばらく軽く目を見張って、震える手でハンマーを手に取り、自分の頭を叩いた。
「なるほど」
「ぐ」
「メアリ・クラリッサ。メアリ。スコーンはジャムと一緒に召し上がられますか」
「!」
トレーを持って戻って来たセバスの前で、メアリは固まる。
「…」
セバスはメアリとジェイムズを交互に見てから頷くと無言でスコーンを並べた。
「セバス。後で、後でね」
「はい。いいえ。はい」
表情を1インチもくずさずセバスは壁際に控えた。
「ジェイムズも、質問しないで」
「フン……」
ジェイムズはメアリの手元を一瞥してから呟いた。
「この玩具は誰から」
「ザックよ」
瞬間、室温が2度下がる。
「…」
ジェイムズは無言でハンマーを掴み自分の頭を叩く。
ピコッという音がとても合わずメアリは小さく噴き出した。
「どうして?」
「本当は…誰に、貰った。お前の分を引き受ける」
「いいの…?レストレイドおじさまから。ダーツの景品で貰ったそうよ」
「…そうか」
ジェイムズは誤魔化すように紅茶に口を付けた。
「おもしろくない?」
「…ああ、お前に説明されたよりは」
逆だとすると…面白いと思っていると言うことで良いのだろうか。
「いつも真実を言えと詰め寄ってくるお前が虚実を求めるとは、可愛くないな」
「ーーーーーーーっ」
しばらく固まって、メアリの顔がみるみる紅潮していく。
「あなたなんか嫌いよ!!」
鞄を掴んで出口に走っていく仔猫の背中を見ながら、少しだけ彼の口元が歪んでいるのをセバスが眺めていた。
「『可愛いな』『好き』って事ですか」
「…」
ピコッ
おわれ
終わりに
Q「そんな文化があったのですか」
A「安心しろねえよ」
以上
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